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♪あなたが 噛んだ・・・
この記事は住まいネット新聞[びお]のブログ集にもエントリーされる、はずです。

♫アタマが 痛い・・・
なんてギャグを、権現様に噛んでもらったあと小声で唄うオヤジがいたから笑っちった。どうしてくれんだよ吹き出してしまうじゃねえか、柄にもなく敬虔な気持ちなのに。

 石鳩岡神楽(岩手県花巻市東和町)の舞初にて。演目の最後に舞う祈祷権現舞で、権現サマが掲げた[体幕]の下を歩き(胎内くぐり) 、頭を噛んでもらって厄を払うのが、毎年頭のならわしになっている。その割に幸が薄いような気もするのだが(笑)、ご利益によってこの程度で済んでいるのだ、と思いつつ。

 こっから笑い話抜きでいきますよ。

 主に早池峰流の神楽を追っかけて10年になる。そもそも自分はそうした郷土芸能に入れあげるほどの人間ではない、はずだった。一般論の範疇で理解と共感はするし、取材の対象として着目はしえたけれど、定期公演やお祭りに駆けつけるほどになるとは、夢にも思わなかった。
 松の木や鶴亀といった吉兆の意匠。太鼓や笛の、いかにも「郷土芸能らしい」旋律とリズム。第一印象はキッチュの一言。隠さずに白状すれば、どこかで古めかしいとも思っていた。そんな浅い第一印象を飛び越えたところに、洗練された美しさがあると気づくことができたのはつくづく幸いだったと思う。それは能や歌舞伎やバレエとは(これらのいずれも理解は浅いが)まったく質(たち)のちがう、農と山仕事に根ざした豊かな土の香りがする。

 時にユネスコの『世界遺産』、こんどは無形文化財の登録が始まるそうだ。石鳩岡神楽の本家(師匠)である、早池峰流岳神楽(たけかぐら)は、対をなす早池峰流大償神楽(おおつくないかぐら)とともに、日本からの登録第一号になる予定という。栄誉なことである。追っかけとしては心からお祝いを申し述べたい。
 一方で、こうした郷土芸能の存続はとてもむずかしくなっている。[世界遺産]岳も大償も、弟子神楽の石鳩岡も十数軒〜数十軒の集落。決して楽ではないはずだし、例外とは言えない(岩手の芸能に明るい、さるお方も気にかけておられた)。人口の減少、高齢化、少子化。ムラでの生活はかつてのように農や山仕事だけでは成り立たず、都市部への勤め人になっていることが公演を難しくする。
 石鳩岡神楽の公演は大小合わせて、年に50回を越えると聞いた。休日を返上し、時には仕事を休みとやりくりして、土日とは限らない縁日にまとまった人数が馳せるのは、ちょっとやそっとの思い入れでできることではない。それでも若手が後に続き、週一の練習に公演にとて頑張っていることにひたすら頭が下がる。
 実数などはわからないが、日本中で膨大な数の郷土芸能が受け継がれることなく消えているはずだ。世界遺産登録はきっと早池峰流神楽の励みになると思うが、決して永続を約束してくれるわけではない。一番大事なことは、神楽がこれから先もずっと舞われ続けること。それには、集落での暮らしが成り立たなければならない。トキを守るためには、トキが生きる里山ごと守らなければならないように。会社勤め〜雇用もさることながら、本来ならば米や野菜や木材が、正しい対価で買い支えられなければいけないのだ。そんな自然と寄り添ったなりわいを土として芽生え、育ったのが、神楽をはじめとする郷土芸能なのだから。

 下は、石鳩岡神楽保存会の会長を務めるNさん、[山神舞]の跳躍。そして扇のとりまわしが美しい「屋嶋舞」は、このお二人の十八番。
by columnbank | 2009-01-19 21:22 | 住めば都的トウホク
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