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今年もカメ防除〜カメムシ殺剤の多くはなくせる。

その日は居合わせなかったが、行われたそーだ。

d0060094_11172880.jpg8月5日、カメムシ防除剤散布。(写真は昨年撮影したの)
■スタークル液剤0.8リットル/10アール……

【米に使うカメムシ殺剤の多くは、無くせる。】
 畦畔の草刈りを、7月21日に行った。この時期の草刈りは大切です。カメムシの発生と稲穂への移動を制限することができるから。
 当家でつくる米は農薬を使っています。私自身がその農薬に代替する技法を持ちあわせていない場合、それを使っています。でも1つだけ、ほんとはすぐにでも減らせる農薬がある。そんなお話をします。ちと長いですよ。
 その薬剤は、カメムシ殺剤。もうすぐ、おそらく8月の初旬までに、農協が手配したラジコンヘリで一円の水田に散布されるでしょう。カメムシ殺剤は、昨今日本で使用基準が緩和されたネオ・ニコチノイド系に分類される薬剤。ミツバチに影響しているとか、人体にも影響がある可能性がとか、欧州では使用基準が厳しいとか、耳にしたことがある方は少なくないでしょう。
 先日、農林水産省が調査結果を発表したばっかりです。
 「国内で大量死したミツバチの死骸を分析したところ、半数以上から水田でまかれたネオニコチノイド系農薬が検出された」

 環境意識の高い方は、基準緩和の反対や不使用を求める署名活動などにサインもしておられると思います。「ネオニコ、環境や人体にどーなの?」という点の検討は、ここではさておきます。そこをこそ突き詰めて論じたい方は、おそらく先へ読み進んでも、きっとあまり面白くないですよ。
 私がカメムシ殺剤やめられる、やめようよ、と思う理由は、無駄な手間とコストをかけたくないから、が直接的であり一番大きい。それと、他の国で厳しくしている薬剤の基準を緩和することないし、なにも国土のあちゃこちゃに撒き散らして無用に虫たちを殺すこともなかろうと思うからです。

 カメムシは米粒内部が固くなる前、液状の段階でとりつき、「米汁」を吸ってしまいます。吸われた米粒は黒く変色して通常より小さく固化します。これがカメムシ被害の「斑点米」。さて、スーパーや米穀店で買ってきた米に斑点米が入っていた、という体験がおありの方はいますか? おられないでしょうね。なぜならパック製品化される段階で、小石粒や雑草の種子などとともに、完璧に除去されるからです。そのための機器が、「色彩選別機」(通称「シキセン」)。着色粒を感知して弾き飛ばしてしまう、ハイテクお利口マシーンです。このシキセン、農業法人や大規模専業コメ農家は有して使っているとこもあります。が、持ってないとこもあるし、小規模な兼業農家が揃えられる安価な機器ではありません。
 一方で米穀流通側は、シキセンを有して必ず使用しています。流通段階で米以外の雑物が混入しないとも限りませんし、なにしろ品質管理世界一(なんですかね?過度な場合もありそうですが)の衛生大国でありますから。つまり斑点米は農薬に頼らずとも完璧に除去できる品質管理と流通の環境が整っているのです。
 しかしてなぜカメムシ殺剤は各地で使われるのか。それは米の等級基準における斑点米の条項が、厳しすぎるから。1000粒に1粒混じっていたら2等米。0.001%です。2等米の農協買い取り価格は1等米に比べて、1俵(60kg)につき1000円安い(ここ最近の米価です。変動はあり)。落級による収入減は、100俵で10万円。1000俵で100万円吹き飛ぶわけですね。
 他方で。そうして1000円安く仕入れることができる米が、応分に安く市販されているでしょうか?されていません。市中の方々が「格安2等米」なんてセールをご覧になったことはないはず。なぜならシキセンで1等米と変わらない製品化が容易にできるのですから。
 ちなみに規格重量が斑点米によって割り込んでしまい損失を出す、なんてこともありません。出荷用30kg入り米袋の斑点米総量は、混入率を跳ね上げて0.004%と想定しても120g。この米袋には検査などのためにきっちり500g多く、つまり30.5kg詰めてあるのですから。いったい誰が得をしているのだろう? 少なくとも農協は得をしていますな。薬剤の売上げ、散布作業の請負とりまとめで……。あとは、2等米を買い付けてシキセンにかけてパック化して販売すれば1俵あたり1000円まるもうけ、てぇ業者がいるとかいいないとか。
 では。私のようにシキセンを備えられない小農家が、友人知人などに直接販売する米は、カメムシ殺剤を使わなければ、斑点米が混入してしまうのか? 結論からいうと、その可能性はありますし、カメムシ殺剤を使っていなかった年には、斑点米が混じったことがありました。しかしそれは米を炊飯釜に取り分ける時点で目視でき、水道水で研ぐ段階で簡単によりわけられる程度のもの。もちろん、斑点米を炊いて食べてしまっても、食味にも健康にもまったく影響はありません。少なくとも私の友人知人は、「ぜ〜んぜん気にならん。気にせん」……と快く了解の上、いつもと変わらない価格で買ってくれました。
 ではでは。手指で除ききれないほどの斑点米が混入することはないのか? 確約はできないのですが、ないと思いますよ(^^)v。なぜなら、経験的にカメムシ害を十二分に小さくする、害を防ぎきることもできる代替技法があるからです。それが先に言いました畦畔の雑草刈り。刈る適期を予測して、雑草で繁殖するカメムシが稲へ移らないようにコントロールすることです。私ごとき技能が低い農業者でも、決して難しくありません。
 それでもなおカメムシ殺剤の散布に農家が頼ってしまうのは、「草刈り防除」の効果が必ずしも完璧・万全ではないから。そして「万一にでも斑点米を出したくない……二等米に落等させたくない」から。病虫害は出る前に防ぐ除く―「防除」を徹底してしまう心理的傾斜の結果ということができるでしょう。「シキセン」が稼働している現状と意味を知らない生産者もいると思いますよ。
 さらに拙宅がカメムシ防除を断り難い理由がもう一つ、実はこれが深刻。「お宅だけ薬撒かないとカメムシの巣になって、周りの田んぼが迷惑だ」というプレッシャーもあるんですねぇ田舎には。科学的にはそんなことは「ありえない」と、宇根豊氏なども調査の結果があると言っておられるんだけど。私も毎日顔をあわせる集落の方々と、無用な諍いはほとほと御免被りたいのです。よって、良い気分はしないのですが、農協へ防除申し込んでいるのがここ数年。
 さて、復習です。カメムシの防除は、農家にとっても、購買者にとっても、ほとんどメリットがありません。端的に言っちゃえば、しなくていい。(注:「禁止」ではなく、カメムシの大発生地、異常大発生等があった場合は薬剤使用がやむをえないことはあると思います。農家それぞれでの判断ができるような「ゆるさ」も必要かと考えます。)
 悪の根源は「等級審査における斑点米の条項」です。こんなもの要らん!等級審査基準を見なおすべし!と主張して活動する団体が各地にちらほらあるようだけど、大きな話題になることはないですね。どうせなら購買者からも運動を展開するとこが現れてくれないですか。生産者と協調できればなおよろし。いっそ「カメムシ殺剤不使用米」の表示シールでも作って、販路まで拓いてしまったらどうだい。緑の平和屋さんとか、せい◯ょうグループ、どうですか。カメムシ殺剤は、米の生産過程で最も後期に使われる薬剤です。それだけ、購買者の口に入るまでの期間も短い。これが日本全国からなくなれば(繰り返すけど例外の場合はありえます)、それだけでも良いことだと思うんだけどな。いきなりハードルの高い、全作物での廃止や無農薬を呼びかけるより、まず1剤、米の現場から無くしたくありませんか。
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by columnbank | 2016-08-13 11:21 | いま田んぼでは2016.