広告制作をやっていた時から、自分の書いたCMなりパンフなりを「作品」と呼ぶのが好きでなかった。「作品ではなく仕事です」なんてつんけんしてたりして。その気持ちはルポを志向して望み通り文章クレジットが入る仕事をお受けする今も、あまり変わらない。
世の中には、初手から志して自分の「作品」を書いてきた作家がいる。たとえば立松和平氏が「一枚の布には山河がしまい込まれている。」(from 「きもの紀行」/家の光協会)などとものせば、うーむさすがじゃ、と膝を打たずにいられない。これはこれでプロの世界。 一方、匿名で長年ライティングにかかわってきた編集者出身の作家はひと味違うもので、あまりキラキラと光り輝く言葉使いがない。たとえば業界で最も多くの手仕事を見、聞き書きしているであろう塩野米松さんの世界。(お会いしたことがあるのでサンづけ) アウトドア誌「BE-PAL」の創刊からスタッフを務め、様々な自然百科も編集してきた、博物的なフィールドを横断し活動する作家である。 地味だけど、読んでいると、職人のそばでじっと耳を澄ませている塩野さんの姿が見えてくる。ひたすら聞く、この姿勢が何より大切。それが文として現れるときには、ともすれば出やすい「我が思い」が抑えられ、淡々と綴られる。思うところが無いわけではない。むしろ手仕事と自然に対する共感、感心、それが廃れつつある時代への危惧や悲しみは、普通一般の人よりもはるかに大きい。それをひとまず「抑制」して、見聞した事実の報告を優先する。自分の思いを入れる時は、見えるか見えないかぐらいに淡く折り込み、自身の存在を感じられないくらいに薄める。気をつけて読めば、書き手の所感の多くは、取材したその「事実」によって代弁されていることに気づくだろう。 ここまで前置きです(笑)。そうした優れたライティングのための視座や方針を季刊「住む。」(販売農文協)にも感じている(当方の記事はさておき)。このところは特に、N副編集長がずっと続けている記事「家をつくるなら近くの山の木で」「手仕事を聞く」が、なんというかいよいよアブラがのってきた。どこがどう良いのかは、前置きで説明してしまった。 思いの丈をまんま綴って読みやすいものに仕上げるには、前者のような作品作家の手練れが最も優れているだろう。けど思いは、「重い」場合も多い。なかなか鮮やかなセンテンスを使ったり、大多数が見落としがちな独自の視点で書くことは案外誰にもできるかもしれない。しかしそれを越えて一本の記事を、一冊の本を、気持ちよく最後まで読ませてくれる人は多くない。 当方には作品作家の技量は明らかにない。あえて歩いていきたい領域といえば後者の、職人的な文章の野辺である。現段階で歩めている自信はない。だって原稿メールで送って10分後には「ああ書けばよかった」「こう書けばよかった」症候群が出てくるんだもん、いまだに。ま、目標ということで、年頭の初心であり所信でありました。ちゃんちゃん。
by columnbank
| 2006-01-04 16:59
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