凡百のいわゆる「グルメリポート」に読興味はない。
優れた食の書き手は少ないけどいるのだ。古くは吉田健一。さらり颯爽としていてすらすら読める。現役では平松洋子氏(売れっ子!)とか、藤田千恵子氏(居酒屋研!)。食卓の前後にある風景や、はるかに食材生産の現場まで続く背景を丹念に聞き取り、書いておられる。これも方向を誤ると、「どっちの料理ショー」みたいに、ひたすら〝食べたいでしょ〟を煽るためのストーリーに仕立てられる。前述のお二人は、自ら抑制を課した文章表現の約束手形みたいなお名前だからこそ、無条件に読み進む。 一番困るのは、「考える舌」ヤマモトマスヒロみたいに、味を伝えようとして形容詞や例えのオンパレードになってしまっているレポート。それを耳で聞かされるテレビ番組になると、怖気が走る。「オーパ!」開高健は筆舌尽くすテキストを芸にまで到達させた頂点かもしれないが、個人的には趣味ではない。疲れるのだ。 「神々の食」(池澤夏樹文・垂見健吾写真/文藝春秋) はどこがいいのか。味を言葉で形容することを放棄している点にある。舌の感覚を言葉で伝えるのはハナから無理だ、という考えが正直で小気味よい。内容は著者が数年間沖縄に暮らして食べた(今はフランスに住んでるんだと)、さまざまな沖縄の食材、料理、食べ方についてのレポートである。「食べましょう、取り寄せましょう」という本ではない。食べもののありがたさ、風土と作り手への敬意を主軸に書かれているのだ。 当ブログにいつもコメントをくれる花巻のRITYより、沖縄土産を頂いた。ありがとう〜。いただきもの強化月間だ。「島とうがらし」の焼酎漬け=コーレーグースは、二、三度使ったことがある。現地ではよく沖縄そばにかけるみたいだけれど、日本蕎麦やうどん、豚しゃぶのタレなんかに使っても辛ウマイ。 初めて実物を見るのが「スパム」=豚肉の缶詰。これは最初アメリカ軍が持ち込んだようで、製造元はやはり「合衆国」とある。何でもとりこんでしまう、ほんに「ちゃんぷるー」文化だねえ。味は後日報告します。 ちなみに当方のばやい、農漁の現場から食についても書くけれども、味については深く語る能力がないので最小限に、ケガしない程度に。食材の背景や風土、作っている人の人柄に紙幅のほぼすべてを費やす。あくまで淡々といきますです。
by columnbank
| 2006-03-16 08:06
| いろいろ
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