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KAMAKURA 20,April~考察の章。

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 鎌倉について、中高校の歴史程度のことしか知らない。ので、このまちがどのようにできたのか知ることは宿題とし、ほぼ印象のみをつづろうと思う。鎌倉の市街地は見たところ、昔ながらの伝統的なまち並みという訳ではない。観光と生活は渾然一体となっているようだし、物見の客を相手にした店は相応に多く、電線がふつうに空を横切っている。総じて景観を乱す要素がないわけではない。それでも、気持ちが静まる許容範囲にとどめられている。落ち着きはらった良いまちである、というのが正直な第一印象だ。
 高いビルがない。ぐるりを囲む丘陵が(ヨリトモさんは戦略的な意味で気に入ったらしいが)どこも緑で、団地化されていない。その山ぎわで、景観保全地区であることを示す看板も多く見かけた。景観運動は早く、昭和40年代から始まったらしい。
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 まちを見る場合、いちばん注目すべきは住まいである。鎌倉の家々は大きさも姿形も多彩だ。大邸宅あり、下見板と白壁の民家あり、モルタルあり。大手ハウスメーカーや中堅工務店が建てたような、新建材固めのマッチボックスも決して少なくはない。明らかに建築士が手がけたと思われる洗練された家は、他のまちよりもずっと多いように感じる。社会的に地位の高い、あるいは作家肌の生活感覚に澄んだ人たちが暮らしてきたことは確かであろう。
 各戸の緑が多い、という点が豊かさとしてひとつ上げられようかと思う。細い路地にひしめく家々が(帰って調べたら40平方キロに人口が17万人もいる)、小さいながらも庭木や草花の居場所を確保している。私たちはふだん気づいていないが、人工を自然に戻そうという力は相当に強いのだ。それはたとえ東京のような超過密都市であろうとも変わりない。ちょっと目を離そうものならアスファルトのわずかな継ぎ目に雑草が根を下ろし、文明の被覆物を端からこなして土に還そうとする。そんな純天然の作用を抑え込み、あえて言うなら意図に沿った緑を偏愛するのが、里山や庭の美であると言えるだろう。意図が明確に働いているまちは例外なく・・・と言えるまでたくさんの事例を見ているわけではないが、相当の確率で美しい。
 東北で(井の中の蛙でまったく恥ずかしい限りだ)、似たようなまちを上げるのはむずかしい。北の景観というものは、正直言えば既に壊れすぎているのだ。冬でも暖かい家や、雪が積もらず葺き替えが簡単な屋根への渇望を、新建材はとりあえず満たしてくれた。そんな事情にも負けず景観の優れたまちを上げれば、秋田県の大仙市角館(旧角館町)。ただし武家屋敷通りをはずれたり、郊外へ行けば、ロードサイドショップが並び民家もテキトー、凡百だけれども。山形県の金山町は、観光地というわけでもないのに、早くから景観条例を設けて年々景観がよくなっている良いまちである。そのくらい、かなあ。
 東京都心から片道890円。都心で7000円のビジネスホテルに泊まるくらいなら、例の素泊まりホテルを使って、鎌倉に泊まった方が楽しいなと、いま考えている。
by columnbank | 2006-04-30 21:11 | 外へ、旅へ
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